@phdthesis{oai:obihiro.repo.nii.ac.jp:02000181, author = {Ahedor, Believe}, month = {2024-04-19, 2024-04-19, 2024-04-19}, note = {2023, application/pdf, 馬ピロプラズマ症(EP)は、Theileria equiとBabesia caballiによる2種類のマダニ媒介性赤血球内寄生性原虫によって引き起こされる馬の重篤な感染症である。これらの原虫に感染すると血管内で溶血が起こり、感染馬に発熱、貧血、黄疸、血色素尿などの臨床症状を引き起こし、最終的には死に至る場合がある。EPに関連する経済的損失には、治療費、流産や死亡による生産性損失、国際的な馬の移動の制限などが挙げられる。そのため、馬産業の利益を維持・確保するためにはEPの疾病制御が極めて重要となる。現在のEPの治療・予防戦略には、化学療法、マダニ駆除、馬の移動制限などが必要となる。しかし、治療薬の効果の低さや副作用、薬剤耐性マダニの出現、診断テストの不確かさなどにより、これらの戦略はあまり有効ではない。 EPは、T. equiとB. caballiを媒介できる特定マダニ種の生息分布と一致して世界的に広く発生が見られる。感染馬は持続的に原虫を保有することが知られており、T. equiは終生、またB. caballiは最長4年間持続感染する。これらの持続感染馬は重要な感染源となり、マダニの媒介により他の馬に感染を広げていく。このことから、EP清浄国である日本、オーストラリア、カナダ、アイスランド、ニュージーランド、グリーンランドでは馬を輸入する際に厳しい規制を設けてT. equiおよびB. caballiの持ち込みを監視している。一方で、EPの発生状況が依然不明な国が多く存在する。これらの国々の状況は、その国内および世界の馬産業に甚大な経済的損失をもたらす危険性がある。そのため、EPの発生が不明な国々におけるT. equiとB. caballiの感染疫学調査は重要である。 本研究では、スリランカとパラグアイで疫学調査が行われた。農業を基盤する両国は家畜動物の数も多い。また、その気候がマダニの活動に適しており、かつ大規模な牛群を飼育していることから、マダニの蔓延とマダニ媒介性疾患の発生は家畜動物で一般的と考えられている。しかしながら、媒介可能なマダニ種が存在するスリランカとパラグアイではEPに関する疫学調査が実施されていなかった。そこで、スリランカではロバを、パラグアイでは馬におけるT. equiおよびB. caballiの感染疫学調査を行った。 第1章では、スリランカで野生化した計111頭のロバから血液を採取し、血液塗抹標本を作製するとともに、そのDNAも抽出した。血液塗抹標本は顕微鏡検査に供試し、DNAサンプルを用いてT. equiとB. caballi-特異的PCR法によるスクリーニング診断を行った。その結果、顕微鏡検査とPCR診断によるT. equiの陽性率は、それぞれ57.7%と85.6%となった。一方で、すべてのロバは顕微鏡検査とPCR診断の両方でB. caballiは検出されなかった。T. equi陽性DNAサンプルから分離された18S rRNA配列の系統学的解析から、スリランカのロバはT. equiの遺伝子型CとDに感染していることが判明した。本研究の成果から、スリランカで減少しつつあるロバ個体群を保全する取り組みにおいてEPに対処することの重要性が明らかとなった。 第2章では、パラグアイで飼育されている計545頭の馬を対象にT. equiとB. caballiの感染について疫学調査を行った。その結果、PCR診断による両種の検出率はそれぞれ32.7%と1.5%となった。そのうち2頭(0.4%)の馬がT. equiとB. caballiの両方に共感染していた。T. equiの感染率は、馬の品種間、雌雄間、1~3歳と3歳以上の年齢層間で有意差は認めれらなかった。また、T. equiまたはB. caballiに単独感染した馬の血液学的指標の平均値は正常範囲内であり、非感染馬のそれと同等であった。一方で、2頭の共感染馬はその血液学的指標で明らかな貧血を示し、EPは貧血馬の鑑別診断項目に含めるべきであることが示唆された。系統学的解析の結果から、パラグアイの馬はT. equi 18S rRNA遺伝子型AとC、またB. caballi rap-1遺伝子型Bに感染していたことが明らかとなった。 第3章では、5つのT. equi遺伝子型(A~E)に対する遺伝子型特異的PCR法を開発し、スリランカのロバおよびパラグアイの馬から採取した計270のT. equi陽性血液DNAサンプルについて解析を行った。その結果、開発された遺伝子型特異的PCR法を用いることで、スリランカのロバサンプルから4つの遺伝子型(A、C、D、E)が、またパラグアイのサンプルから5つの遺伝子型すべてが検出されることが示された。さらに、スリランカでは全サンプル、パラグアイでは93.3%のサンプルで少なくとも1つの遺伝子型の感染が確認され、このPCR法の感度の高さが証明された。本PCR法は、スリランカとパラグアイのそれぞれ90.2%と22.5%のサンプルにおいて、様々な組み合わせの共感染も検出した。また、遺伝子型特異的PCR法で得られたアンプリコンの遺伝子配列から、本PCR法の特異性も証明された。これらの結果から、本遺伝子型特異的PCR法は、T. equiの遺伝子型を区別して検出できる有益なツールであることが確認された。 一連の調査研究の結果は、EPの発生状態が不明であっても媒介可能なマダニ種が蔓延している国であれば、T. equiおよびB. caballi感染が流行している可能性が高いことを示唆している。EPの状態が不明な地域でこれらの感染疫学調査を積極的に行うことは、効果的な疾病制御を促進する上で重要となる。また、T. equi用に開発された遺伝子型特異的PCR法を用いて、その遺伝子型の多様性を考慮した防疫戦略を策定すれば、EPに対する効果的な疾病制御に繋がる。結論として、本研究の成果は世界的なEPの制御に役立つものとなった。, 博士学位論文, 大学院畜産学研究科 獣医学専攻, Doctoral Program of Veterinary Science}, school = {帯広畜産大学}, title = {Molecular epidemiology and genotypic diversity of equine piroplasma parasites}, year = {} }